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2004.03.28

お引っ越しの真っ最中だというのに・・・


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引っ越しの支度で忙しいというのに、気がついたら横になって向田邦子の「父の詫び状」を読んでいた。段ボールへ本などを押し込んでいるときなど、ふと目に付いた文庫などを拾い読みしているのだ。そうなったらもうお終い、先に進まない。

やはり、「お辞儀」に自然と眼が行く。
特に好きなところは、向田さんの祖母が亡くなり、通夜に突然現れる父の保険会社の社長への応対シーン。

通夜の晩、突然玄関の方にざわめきが起こった。
「社長がお見えになった」
祖母の棺のそばに座っていた父が、客を蹴散らすように玄関へ飛んでいった。式台に手をつき入ってきた初老の人にお辞儀をした。
それはお辞儀というより平服といった方がよかった。
(中略)
(文春文庫「父の詫び状」中『お辞儀』より)

向田さんの父親という人は、家庭では威張りの権家みたいなもので、家族を怒鳴り、どんなことがあっても家族に対してお辞儀などする事など無かったそうである。
その父が、卑屈とも思えるお辞儀をして向田さんを驚かせている。その描写が胸を打ち、向田さんの書き手としての凄みが伝わってくるのです。
特に結びがいいです。何度読んでもいいです。

親のお辞儀を見るのは複雑なものである。
面映ゆいというか、当惑するというか、おかしく、かなしく、そして少しばかり腹立たしい。
自分が育て上げたものに頭を下げるということは、つまり人が老いるということは避けがたいことだと判っていても、子供としてはなんとも切ないものがあるのだ。
(文春文庫「父の詫び状」中『お辞儀』より)

人に読まれる文章というのはこうありたいものです。
「父の詫び状」は、向田文学を語る上でやはり貴重なものではあります。いつ読んでも、ここにあるエッセイはどれとは言わず心を打ちます。泣かせます。
うむ、これじゃ引っ越しの準備が進まないなあ。。。
名古屋から神戸へ。
今度の更新はいつになるやら。。。


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