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2006.01.29

最後の晩餐

Valentine

一昨日、ちょっとした懇親会があって飲み過ぎ、頭が重かった。
たまたまカミさんが来ていたんだけど、午前様だった。
早く帰ればいいのだけど、それがなかなかできない。

翌朝起きがけに、
「梅田へ用事があるんだけど、一緒に行かない?」
なんて訊いてきた。
頭が痛かったから、
「ひとりでどうぞ」
と言ったら、いつの間にか居なくなってました。(^^
今日帰るので、無理をして付き合ってやってもよかったのだけど、頭が痛いというのではどうしようもない。

こちらに来ているときだけは、マメに付き合ってやろうと思うんだけど、それがなかなかできない。
太宰治の『桜桃』、どうもあの世界なのです。
お酒を飲んでいて、そのときに出てきた桜桃。
家で待っている子供に持って帰ったらさぞ喜ぶだろうなと主人公は思うんだけど、その場でムシャムシャ食ってしまう。ひとつ残らず。子供や奥方へは土産なし。非道く酔ってのご帰還。なんて非道いやつだ。思うだけで止めちゃうんなら思うな...。

思うだけ。。。
わたくしも早く帰って、カミさんの手料理でもゆっくり食べよう、そう思うのです。思うのですがなかなかできない。
わいわいと騒いでいたら午前様です。桜桃ならぬカニなんぞを男子も女子も入り混じって、みなでムシャムシャ食ってそれでお仕舞い。宴のあとの悲しさ。
思うだけで止めちゃうんなら思うな...。
ええ、良い死に方はしません。(^^

反省もあり、昨晩は一緒に飯を食いました。
北海道から持参したものでささやかな晩餐。
『このたびは格別の御働き・・・』
向田邦子さんの「父の詫び状」にある一節。
そう言って、カミさんの労をねぎらおうとしたけどとても口では言えない。
これほど難しい言葉はない、あらためて実感しました。

ただ、わたくしめはいつもカミさんが帰る前の日の晩餐、このときはさりげなく彼女の様子を窺うようにしています。
うしろめたさからではなく、縁起でもない話ですが、帰りの飛行機が事故に遭遇して今生の別れになるかも知れない、そういった思いからなのです。永年連れ添ったものへのせめてもの思いといってしまっては格好が良すぎますが...。
記憶にとどめておく、この歳になったらある程度の覚悟みたいなものは必要なのですから。。。

こちらのそんな思いに気づいているのかどうか、同様な態度はカミさんにも見られるような気がするのですが、それはこちらの気のせいかも知れません。
そのようにして、このたびの「最後の晩餐」は終わり、
「じゃあな!」
と言って片手を上げ、男のような可愛くない挨拶を残して彼女は去って行きました。見事としか言いようがない。(^^
記憶にとどめおく思い・・・。
やはり気のせいだったのか...。

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向田邦子さんは「父の詫び状」の中で、『お辞儀』についても書かれています。親が子供にするお辞儀というのはなんとも妙なものです。切なく悲しい。

 母は子供たちにお辞儀をみせてくれたが、父は現役のまま六十四歳で、しかも一瞬の心不全で急死したので、遂に子供には頭を下げずじまいであった。晩年は多少折れたようなものの、やはり叱りどなり私達に頭を下げさせたまま死んだ。
 親のお辞儀を見るのは複雑なものである。
 面映ゆいというか、当惑するというか、おかしく、かなしく、そして少しばかり腹立たしい。
 自分が育て上げたものに頭を下げるということは、つまり人が老いるということは避けがたいことだと判っていても、子供としてはなんとも切ないものがあるのだ。
(向田邦子著 文藝春秋社刊「父の詫び状」中『お辞儀』より)

子供へのお辞儀はおかしく、かなしく、そして少しばかり腹立たしい。
妻へのお辞儀、これだってどこかおかしく、かなしく、そして少しばかり腹立たしいような気がする。
そしてどことなく気恥ずかしさがつきまとう。

たまたまの偶然かも知れないが、この『お辞儀』のエッセイの中に、飛行機で香港旅行へ飛び立つ母を見送る向田さんの心境がある。
「どうか落ちないで下さい。どうしても落ちるのだったら帰りにして下さい」
そんな風に母を思いやり、祈るようにして飛行機を見送るのだが、悲しいことに、飛行機事故の犠牲になって還らぬ人となってしまったのは、当の向田さんそのひとだった。昭和56年8月。享年52歳。
今もあのニュースを思い出すだけで胸が締めつけられます。(合掌)

カミさん、いまごろは能登半島上空あたりだろうか。
「どうか落ちないで下さい」
せめてもの『夫の詫び状』のつもりで・・・。(祈)


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コメント

信天翁さん、

興味深く拝見致しました。

>「じゃあな!」と言って片手を上げ、

素敵な奥様ですね。
『桜桃』については・・私も身に覚えがあり(苦笑)、不意打ちを食らったかのごとく身悶えしております。

不意打ちといえば・・・
先々週、まさに私に不意打ちを食らわせてくれた人物についてのお話があります。
内容についてはメールで送らせて頂きますね。

投稿: TAKA | 2006.01.30 12:22

こんにちは。

読んでて、なんか切なくなりました。
まだ結婚8年の私ですが・・・。

去年知り合いの同業の船が稚内沖で転覆しました。
冷たい海の中、乗組員3名は水死でした。
その一週間前くらいまで稚内で漁をしていたうちの船、
もしうちの船が転覆したらと思うと、
毎日ぬくぬくと過ごさせてもらってる自分達にいかに感謝の気持ちが足りなかったか反省してしまいました。
船も飛行機も当たり前のように港に入ってくるわけではない・・・ですね。

先日、南に下っていった船ですが、やはり見送るときは子供達に早起きさせて港に連れて行きました。
父親の姿、それこそ縁起でもないですが、きちんと記憶にとどめておかせたいとの思いがどこかにあります。

投稿: yone | 2006.01.30 15:55

>TAKAさん

『桜桃』に寄せる思いはいずこも同じですかね。
ごめんよ、ごめんよと心の中で呟き、やっていることといったら・・・。
これ以上触れることは禁物です。(^^

不意打ちの件、メールを楽しみにしています。
いろいろありますねえ、世の中ってやつは。


>yoneちゃん

切ない思いにさせてしまってごめんなさい。
そんな気はなかったのですが、書いて行く内になんだか妙な展開になってしまって・・・。

ご主人、南の方で頑張っていることでしょう。
子供達を早起きさせてのところは、さすがにyoneちゃんです、天晴れ。。。(^^;

>船も飛行機も当たり前のように港に入ってくるわけではない・・・ですね。

そのとおりですね。
ただ、だからといって心配ばかりしていてもいけない。
当たり前のように入ってくる飛行機も船もあるのですから。
まもなく節分、恵方巻で厄でも落としましょう...。(^^;

投稿: 信天翁 | 2006.01.31 09:45

信天翁さん、

まったくもって、「桜桃」に関しては心が痛む限りでございます。しっぺ返しに遭わぬよう、日々の行いを正さねば…。思うのは難しいことじゃないんですよね、行動で示さねば(苦笑)。

不意打ちの件は、メールの通りでございます。函館との関わり、最早切っても切れぬ間柄になっておるようです。願ったり叶ったりではありますが(笑)。

年末年始の余波も落ち着き、ようやくリズムに乗ってきました。日頃の運動不足を解消すべく、この週末は春に再開する草野球に向けた自主トレに励もうと思います。興味が薄れつつあるとはいえ、キャンプインしましたしね。元球児としては黙っていられない季節であります。

投稿: TAKA | 2006.02.01 17:01

TAKAさん

メール、読ませて頂きました。
う~ん、残念というか、不意打ちだけで終わってしまうとは。
「北の国の女にゃ気をつけな」って歌詞の中島みゆきの曲があるけど、「北の国の女の謙虚さ」にも困ったものです。
涙をためて「すきやき弁当」を食うTAKAさんの姿が目に浮かぶようです。
美しい話だ...。

東京の雑踏の中にただひとり われ泣きぬれて「すきやき弁当」を食う

お粗末でした。(^^;

投稿: 信天翁 | 2006.02.03 09:10

信天翁さん、

メール、ご覧頂いたようで。
まったくもって驚かされました。
後日、函館の友人にこの件について話す機会があったのですが、
彼らも一様に感嘆の声を漏らすばかりでして。

>東京の雑踏の中にただひとり われ泣きぬれて「すきやき弁当」を食う

いえいえ、結構なお点前で(笑)

一昨日も雪が降りまして、昨夜飲みに繰り出す途中、見事に滑って転びました。
膝小僧に絆創膏を貼るなんて・・・一体何年ぶりでしょう・・・。元々体育会系なもんで、変なところで懐かしさがぶり返してきました。

投稿: TAKA | 2006.02.06 16:22

TAKAさん

東京の他愛のない雪で転んではいけません。(^^
膝小僧は大丈夫ですか?
体育会系とはいえど、年齢と伴に足腰が弱って行くのですから、充分お気をつけ下さい。

で、函館の方にはお礼の連絡とれたのでしょうか。
なんとも美しいお話しで、

>彼らも一様に感嘆の声を漏らすばかりでして。

これにつきます。(^^ ワラッテハイケナイ...
今後のご検討を期待しております。

この週初め、所用で瀬戸内海の「鬼ヶ島」へ行ってきました。香川県女木島。
なんとも不思議な島で、こんどブログに記事を上げようかなと思っています。
瀬戸内の小島って、はまればはまるほど奇妙奇天烈、ミステリアスゾーンということになります。

投稿: 信天翁 | 2006.02.08 15:29

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