貰い物
昨日、この春に叙勲、褒章を授与されたお二方の祝賀会があった。
このお二方はともに女性で、お見事な人生を送っておられる。
それはそれとして、祝賀会を終えての帰り際、お二方からの受章記念の進物があった。小さなものから持ち重りのするものまで、包装されてちょっと大きめの紙袋に収められている。それを持って電車に乗り、周囲の客達の目を気にしながら、ふと向田邦子さんのことを思った。
たしか「父の詫び状」にあったはずである。
向田さんは父の性急な性格の血を引いたと言って嘆いておられる。
その父は、客がやって来たときに持参する手土産などが無性に気になり、その客がいるときから気もそぞろ、その中身が何か気になってそわそわしているのである。
客が帰るやいなや、
「邦子が気になっているようだから、開けてやりなさい」
といって母に命じるのである。
勿論、これは本人が気になってしょうがないのだ。
そんなせっかちな性格が向田さんに引き継がれ、嫌だなと思いながらも、向田さんも同じようなことをやっていたのだ。
結婚披露宴に出版記念会。そんなところで帰りに渡される引出物。
その中身は一体何か、気になってしょうがない。見てしまわないかぎり安心できないというか、何も手に着かない。
そんな性分だから、途中のタクシーの中だろうと喫茶店だろうと構わずに包装を解いてしまうのだ。
中を確認してから安堵し、父に似た嫌な性格だなと言って嘆くのである。
満員の電車内、向田さんだったらこの包装を解いてしまうだろうか。
ふとそんなことを思い出しながら、私は大きな紙袋を膝の上に乗せていた。
私はどちらかというと、この向田さんとは正反対の性分である。
このような引出物は、自宅に帰ってからゆっくり吟味したいのだ。そしてその場は、周囲をきっちりと整理し、正座はしないが、気持ちはそんな厳粛さを持って臨むのである。
そこで昨夜の受章記念の進物である。
帰宅するやテーブルの上を片づけ、湯飲みやら朝刊やら回覧板などをすっかり追いやり、テーブル拭きで卓上を綺麗にし、儀式のような厳粛さで包装を解いた。
菓子はバームクーヘンだった。そのあとから、飴とあられと金平糖の入った朱塗りの三段重ねのお重が出てきた。
持ち重りのする大きな箱からは九谷の花瓶が出てきた。最後は慣用句辞典が堂々として現れた。
花瓶をテーブルに置き、金平糖を口に放り込み、ゆっくりと慣用句辞典をパラパラとやってみた。
重厚な絵柄の花瓶も好いが、中でも、朱塗りの三段お重は十センチ四方と小さいのだが、すっかり気に入ってしまった。これならいろいろと一人生活に重宝しそうである。
バームクーヘンを小さく切り、お茶を淹れてひと口すすり、そんなことを思ってみた。
こんなふうに、ひとつひとつを時間をかけて吟味するのが好きなのである。
これも困った性分といってしまえばそれまでだが。
向田さんの性急型とこのようなゆっくり吟味型の性分。
このどちらが好いとかはいえないが、貰い物にはそんな人の性格を映し出す不思議なものが潜んでいる。
勿論、貰い物とは大層有り難いものであることにはちがいない。
そんなことを思いながら、ひとつまたひとつと金平糖を囓っているひと気のない静かな週末の昼時である。
果たして、みなさんはどちらの性分だろうか。
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コメント
はじめまして♪
金平糖は、見てるだけでも楽しくて可愛い
お菓子ですね♪
やっぱ一粒ずつ食べるのが好きです。一度に、
いくつも口の中へ放り込む人は、性急型かも・・
食べ方にも、性格が表れたりしますね・・・^^
投稿: sion | 2006.06.07 23:29
sionさん、コメントありがとうございます。
ココログのメンテナンスが長引き、コメントが遅くなってしまいました。すみません。
金平糖、ほんと見ているだけで綺麗で可愛いです。
そのひとつを口に入れて囓ってみたのですが、子供の頃に感じた味とは違い、やけに堅くて頑丈で、歯が折れてしまうんじゃないかなと思ったくらいです。
こんな調子ですから、性格がいくらか性急型かも知れませんが、いくつも口の中へ放り込むなんてことはできませんです。
sionさんはひとつひとつ派ですよね。
それが正統派というものです。
>食べ方にも、性格が表れたりしますね・・・^^
おっしゃるとおりです。気をつけよおっと。(^^;
またのお越しをお待ちしております。
投稿: 信天翁 | 2006.06.08 19:53