花のセンセイ

花のセンセイと電話で話し込んだ。
息子の話になり、センセイは憤っていたけど、聞いているとこの息子はかなりの大物である。
囲碁をやっている。全国高校選手権でも優勝している強者である。
灘校の子と選手権で打ったときのこと、見事この子をくだしたそうである。
対戦後、名人級の過去の棋譜を頭に詰め込んだ灘校はこう訊いてきたそうだ。
「ここのところで、どうしてここに打ってきたの?」
どうも名人級の棋譜にはそのような手はないらしい。
灘校の読みが完全に狂ってしまったのである。
「ここに打つとキレイだったから」
センセイの息子の弁である。
ここに打って、次にここに打つ。そうすると盤面は彼にとって絵画を描いている画家のように満足する結果となる。そんな思いを秘めながら、彼は盤面を彼のキャンバスのように縦横無尽に流れ打ち、そして彼独自の絵画を完成させたのだろう。それで勝ってしまうところがすごい。自在流。棋譜などもともと彼には必要ないのかも知れない。
彼の頭の柔らかさに感嘆せずにはいられない。
「灘校ってすごいの?」
「キミ、灘校知らないで相手と打ってたの?」
「うん」
「バカみたい」
「そんな人に勝ったんだ、ボク」
「・・・」
若さとは羨ましいかぎりである。
「いまどこから?」
「岐阜駅にあるビルの中」
CDショップから流れるコブクロの曲を携帯は拾っていたに違いない。
そのショップの店頭にある花壇に目をやると、いろいろな草花が咲いていた。外の寒さを感じることもなく、草花は健康そうに上へ上へと伸びていた。
黄色い花が目につき、花名の札を確認すると、ツワブキと書かれていた。
ツワブキは派手さはなく、そして貧相でもなかった。
「ツワブキがある」
「ツワブキ?」
「うん、向田邦子さんの・・・」
「ツワリのツワからとったツワ子さん」
「いえ、ツワブキのツワ子ですと言っていた」
「常子さんもいたなあ」
「常子さんは、花のセンセイ。君と一緒だ」
そんな会話のBGMがコブクロというのも悪くない。
「息子さん、いつ帰ってくるの?」
「もうすぐ」
「よろしく哀愁だ」
「うん」
岐阜もまんざら悪くはないのである。
帰宅してツワブキの花言葉を調べてみた。

ツワブキ。
「謙譲」「困難に傷つけられない」
世間の目などを気にせず、思ったことをやってしまう
奔放で型破りな性格。女性の場合「男勝り」タイプが
多い。うわさや批判には敢然と立ち向かっていきます。
向田さんはここをツワ子に重ねたに違いない。
ツワ子、ワタクシの「花のセンセイ」そのものである。
ワタクシは、そんなツワブキをきわだたせるカスミソウなのである。
ツワブキに乾杯!
ヱビスビールを飲みながら。
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