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2009年9月に作成された記事

2009.09.19

海峡を渡る風

Sennnokaze

東大沼の流山温泉は変わらぬたたずまいだった。
脱衣所にはやはり頭上からゆったりとジャズが流れて降り落ちる。
露天風呂に浸かって眼前の駒ヶ岳に目をやると、視界に入ってきたのは夕日に輝き黄金色に光るすすきだった。すすきは秋の到来を演出し、その後方にはっきりとした輪郭を浮かび上がらせている駒ヶ岳は寒々としていて秋そのものだった。
疲れきった身体を湯に浸すと、顔を撫でてとおりすぎる風もまた秋の気配を思わせる。
「千の風になってか・・・」
一人呟いてみた。
とうとう一人になってしまいました。札幌に転居して10余年にもなるSさんからそんなメッセージをいただいた。贈られてきた同人誌にそのメッセージはメモとして挟まっており、いつもの流麗な文字とは違い、そのメモの文字は力なく脱力しているようだった。主人を6月に亡くしたとあり、そしてとうとう一人になってしまいましたと続くのである。いずれは誰だって一人になるのだから、そんなに悲しんでばかりいてはいけませんよと、そんな独り言を呟きながらも、いやSさんには娘さんがいるからほんとうの一人とは違うなと妙な思いに捕らわれ、やや間があって、こんな屁理屈はまるで車谷長吉先生そのものじゃないかと嘆いてみたりする。

Sさんのご主人とは面識がなかったからかどうかは別として、そのとき不意に思い出されたのは坂本さんだった。
とうとう一人になってしまいましたとメモを寄こしたSさんと坂本さんはどうも結びつかないが、黄金色に揺れるすすきの向こうにある駒ヶ岳を見ていたら、すでに千の風になってしまった坂本さんの面影がそろそろとすすきにかぶさり、それが不思議とSさんに重なった、ただそれだけのことなのだろう。とにかくそのとき坂本さんを思い出してしまったのである。
坂本さんは川柳をたしなむお人だった。川柳だけにしておけばよいのに、小説にまで手を出したのがいけなかった。
「これはいけませんね」
道南を舞台にした坂本さんの小説を手にとり、生意気に言った。
「それよりは、川柳の評論こそ坂本さんだ」
「うむ」
坂本さんは複雑な表情を見せて相好をくずされた。
暴風に近い強風が、沖に停泊中の連絡船のブリッジの舷窓を叩いていたから、このときの二人は当直中だったように思われる。暴風が津軽海峡に接近する。ダイヤを切るから沖に停泊して待機せよ。当時はこんなふうにしてしばしば運航が切られた。4時間ごとの当直交代。そのときは坂本さんと当直中にこんなやりとりをして暴風圏の通過を待ったにちがいない。

「ここはソイがよく釣れるそうだよ」
のんびりした声である。どこから持ち出してきたのか、釣り竿を手にした坂本さんが言った。そしてリーサイド、つまり風下にあたる舷窓のガラス戸を開き、釣り糸をたれたのである。風に流されながらもするすると釣り糸は闇の中へ落ちていった。まるでそれは、蜘蛛の糸がふわりふわりと頼りげなく深夜のおぞましい奈落へとゆるやかに落ちていく小説の世界をみるようだった。
そんな坂本さんを見やりながら、そういえば坂本邸で実に旨いソイの刺身を食ったことがあるのを思い出していた。
そのソイは、坂本さんよりはいかにもしっかりした息子さんが釣ってきたものらしく、達者なその息子さんがさばいて書斎に運んできたものである。刺身はいろいろ食してきたが、これほどに美味い刺身を食べたことはそれまでなかった。
「釣れますかね、ソイは?」
「大丈夫!」
坂本さんが自信を持ってことにあたるときは注意を要する。やはり、1時間が経っても釣り糸はぴくりともしなかった。暴風圏はいよいよ接近し、波高の大きくなった三角波が夜目にもはっきりした形で確認することができた。かたかたと小刻みに波浪は客も車両も無い連絡船の舷を一定のリズムを刻みながら叩きつづけた。
「もうちょっと遠くへ投げてみてはどうです?」
「うむ、それもそうだね」
強風に怯むことなく、坂本さんは釣り竿を手元に引くと、開かれた舷窓の外へ向かっておもいっきり釣り糸を放った。一瞬光ったテグスは、やはり漆黒の闇の世界へ吸い込まれるように消えてなくなった。
そのときだった。カチンといった金属音が闇夜に目をこらす二人の耳に届いた。少しの間沈黙があり、そして二人は顔を見合わせて笑った。その笑いは実に気まずく、格好の悪い笑いであった。坂本さんの放った釣り糸は、強風に押し流され、前方にある甲板におもりごと無惨にもたたきつけられてしまったのだった。
坂本さんは観念した。僕も観念した。
それ以来、僕はソイの刺身を口にしたことがない。
大沼に吹く千の風は、そんな想いとともに津軽海峡を越えてやってくる。

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2009.09.06

赤星★

Sappro

昨日の朝刊でサッポロラガービールのCM紙面があった。
赤星。まるでクラッシックな風貌の缶が真っ赤な星とともに映えている。
なにやら「わが赤星物語」として、じんとくる、ほっとするエッセイを募集しているらしく、紙面にもその一部が掲載されていた。
9月9日数量限定発売らしく、それに先行して一部コンビニですでに発売しているとあった。黙っていられない。これは黙っていられない。
早速、近くのコンビニへ直行する。直行するものの、どこにもそんな赤星はなかった。
まあ、ここは関西。アサヒに比べてサッポロは分が悪いから仕方がないか。三軒目でありました、赤星。(笑)
うまいですなあ、サッポロは(笑)
調子に乗って、ただいまサッポロさんのサイトに行き、じんとくるかほっとするかは別として、「わが赤星物語」を書いてきました。400字以内。ただの戯言の類です。(笑)

Lenovo

サッポロはここまで。
次にといってはなんだけど、いきなりlenovoです。
なんか欲しいような欲しくないようでminiノート、結局買いました。
lenovoなんて全く知らなかったけど、店員さん曰く、中国製ですがもともとはIBMです。
つまりThinkPadなんですねlenoboって、知りませんでした。
ほんとうはvaioが本命だったけど、vaioは出たばかりでほとんど値引きなし。
それに比べ、dellやgatewayはかなりリーズナブルなところまで値引きしていて、でもね、バッテリーで2時間駆動のdellやgatewayに比べりゃ、5時間なんていうlenovoはやはりすぐれもののIBMであり、ここはlenovoということで決着したというところ。
無線lanでフリースポットからばりばりインターネットといきたいところだけど、ワタクシ時間がないものだからして・・・。(泣)
ただいま赤星を飲みながらlenovoで記事を書いていて候。(笑)

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2009.09.04

女と男ときつね

Niji Musuko Kitune

夏が終わったのか終わっていないのか、今日も暑い一日だった。
暑い一日だったと書いているが、その一日はまだ終わっていない。
エアコンをフル回転し、とりあえず意識を整え、パソコンに向かっている。
睡魔は容赦なく襲ってきて、仕方がないので一眠りし、起きたら外で奇妙な名も知れぬ鳥がキッ、キッと苦しそうに鳴いている。
先日読み終えた文庫本をベッドに横になりぱらぱらとめくっている。何を確認するでもなく、ただぱらぱらとやっているだけだ。
その一冊は角田光代で、もう一冊は吉田修一。ついでにと言っては失礼だが森見登美彦である。これらのいずれもがブックオフで買ったもので、したがってどんな小説なのか判らないのは当たり前で、つまり行き当たりばったりで何が飛び出すか判らないまま読み出したのである。
角田の小説は姉妹がいて、その妹が姉の男を盗るといった女の世界を書いている。そして吉田は男同士の同棲、つまりホモの男たちを何食わぬ顔でさらりと書いている。
角田の「夜かかる虹」を読み、やりきれない気分で吉田の「最後の息子」を読み終えたときには精根尽き果てた。(笑)
ゲン直しでもないが、ここはすっきりした気分になりたくて森見の「きつねのはなし」の登場である。
三者三様。女の世界に男の世界にきつねの世界である。実力派揃いであるが、これらを一気読みすることは、これはこれで相当疲れるので、その覚悟をお持ちお方はどうぞブックオフでお買い求めください。各100円、300円であなたを魑魅魍魎、摩訶不思議な世界へ誘ってくれます。(笑)
大阪午後から曇り。外では相変わらずキッ、キッと狐ならぬ怪しい名も知れぬ鳥が鳴いている夕刻である。

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